焼付け漆

前回の話の続きです。
山猫堂の特色、それは「焼付け漆」という技法です。

先ずは通常の漆塗りを説明しますと、
絵の具は水分が蒸発することにより固まります。
ペンキは揮発成分が蒸発することにより固くなります。
漆はそれとは異なり、空気中の水分と漆の成分が結合して硬化する、という性質を持っています。
ですので、通常の漆塗りは漆を塗った後、
適度な湿度と温度を保った部屋、もしくは箱の中に置かなければ硬化しません。

しかし、漆にはもう一つ硬化する条件があります。
漆は焼けるほどの高温に晒すことで硬化するという隠れた秘密があるのです。
それがその名の通り「焼付け漆」という技法です。
特に金属に漆塗りを施す場合に使われます。
南部鉄器の黒い色も焼いた鉄瓶に漆をジュッと焼付けている色だったりします。

山猫堂の製品には基本的にこの焼付け漆の技法で漆が塗られています。
その利点とは何か?
それはみなさんが漆で連想すること第一位かもしれない「かぶれ」に対する利点です。
漆でかぶれるのは漆に含まれる酵素が皮膚と接触した時に炎症を起こす為ですが、
焼付け漆は高温で熱するため、その酵素の働きを止める効果があります。
もちろん通常の塗りでも完全に漆を硬化させれば、かぶれる心配は殆どありません。

もう一つの利点は作業上の利点ですが、「時短」です。
通常の塗りでは漆が硬化するまで半日から数日かかるのですが、
熱をかける方法では数時間、早くて10分で硬化させることが出来ます。
ですのでより早く完成させることも出来、浮いた時間でさらにより手をかける事もできます。

焼付け漆のいいところだけ書きましたが、万能ではありません。
使いにくいシチュエーションも多々ありますし、温度や時間の監理も結構シビアです。
そういう所も面白くて試行錯誤の日々を送っています。

長くなってきましたので、今回はこの辺にしておきます。
次回ももう少し自己紹介を続けてみようかなと思っています。
ではまた。

焼付け漆に大活躍のオーブンです。
(もちろん漆専用です)