今回は漆について話したいと思います。
私アクセサリーを主に作っているので、必要な技術は漆の技術だけでなく彫金の技術も必須です。
しかし、私は自分のことを漆職人だと考えているので、
漆の技術を基本として彫金技術とともに突き詰めていきたいと思っています。
そこで先ずは自分の根本である漆について。
私が自分の作品で主に使っている手法は以前も紹介しましたが「焼付け漆」という方法です。
通常漆は空気中の水分と漆の成分に含まれる酵素が結合して固まるという性質を利用しています。
ですので普通はある程度の湿度と温度が必要とされ、
「室(ムロ)」と呼ばれる専用の入れ物に入れて固まらせます。
しかし漆はもう一つ固まる方法があります。
それが高温に晒すことで、通常100℃から200℃の温度に一定時間置くことで硬化します。
さらにアクセサリーに持って来いな利点。
それは漆が敬遠される一因でもある、漆かぶれです。
漆は普通に塗っても完全に固まればかぶれの心配はありませんが、
乾燥が不十分だと漆かぶれのリスクがあります。
しかし、焼付け漆だとかぶれの原因となる酵素が活動を停止するため、
常に肌と接するアクセサリーにとって最適と言えます。
余談ですが私も漆を始める前はかぶれが不安でテストをしました。
でもテストの方法もわからなかったので
手の甲に漆を付けて絆創膏を貼って1週間ほどそのままで過ごしてみました。
見事に穴が空きました…
しかし漆に対するアレルギー反応は起こらない体質だったので、その後ひどいかぶれになることはありません。
さて話を戻して。
では現在色々な塗料があるのに何故私は漆を使うのか。
最大の理由は私が漆職人だから。
サラリーマンを辞めてものづくりを一生の仕事にすると決めてから、ものづくりの仕事を色々調べました。
そして折角日本人に生まれたのだから、日本に伝統的に伝わる工芸を、
その中で私が一番可能性を感じることが出来たのが「漆芸」でした。
そして漆器の本場石川県輪島で技術を学び、独立。
ですので私は「アクセサリーを作りたい」ではなく「漆を使った物が作りたい」が根本にあり、
「漆を活かすためにどんな物が作れるのか」を考えた末、アクセサリーに辿り着いたのです。
漆は器だけじゃない、もっと身近に漆の技の凄さを感じてもらうためにどうすればいいか、
漆という天然素材と伝統技術が現代の素材に勝てることを証明したいという思いもあります。
私の作品は現時点では漆芸の端っこの方に置かせていただいている身ですが、
目標は高く設定してそれを目指して精進して行きたいです。
長くなってしまいましたので今回はこの辺りで。
ではまた。