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今回は母国語のみお送りいたします。

 

伝統工芸の末端に席を置いているつもりの者として常に考えているのは、
この2016年に伝統工芸をやる意味は何か?ということです。

「伝統工芸なんて昔のことをずっと続けているだけじゃないか」
「新しい素材、技術があるのに何故古い物にこだわるんだ」という声もあるかと思います。
新しいものが便利なのは当たり前ですが、古いものの方が素晴らしい場合もあるのです。
新しい物を追求していくのは人類の発展において必要なことなのですが、
昔ながらのいい物を大切にしていく人もまた必要だと思うのです。
私は新しいテクノロジーも好きですが、同じくらい日本伝統のデザインや工芸にも心惹かれています。
日本伝統のデザインはとてもユニークで海外の人も虜にしています。
そんな貴重なものを是非とも未来に受け継いで行かなければならない、
自分がその役割を少しでも担えたらいいなと思いこんなことを生業にしています。

もう一つの意味は私が「日本人」でということです。
私は20代の頃1年ほど海外で過ごしたことがあるのですが、
そこで驚いたことは「自分は日本のことを知っているようで殆ど知らない」という事実でした。
日本を離れて初めて、日本の文化を真剣に勉強したいと思うようになったんです。
そうしたことがきっかけで日本の伝統文化を調べだしたことが高じて、
ついには伝統工芸を仕事にしたいと思うようになってしまったのです。
私自身は漆を始める前は漆というものに触れたこともなければ、漆器を使った記憶もありませんでしたが、
それでも漆芸に魅力と可能性を感じて「この技術を自分のものにしたい」と思いました。
ひょっとしたら私の感性がちょっとズレているだけなのかもしれませんが、
日本の伝統文化にはそれだけの魅力があると私自身は感じています。

今の私の最大の関心事は日本の伝統文化の素晴らしさを海外の人に届けることです。
日本の伝統文化を海外の人に広めることはビジネスの観点からも重要だと思っています。
今の伝統工芸の世界は「売れないから」とドンドン縮小しています。
それを変えるためには明治時代の頃のように世界にマーケットを広げていく必要があります。
そのために海外の人にもわかりやすく、尚且つ使いやすいものを作らなければなりません。
今はどうすればそんな商品が作れるのか、どう海外の人に知ってもらうのか、ということを必死で考える毎日です。

この文章で伝統工芸の魅力が伝わったか自信はありませんので、折を見つけてこれからも書いていきたいと思います。

 

 

次回は新作を紹介できると思いますのでよろしくお願い致します。

 

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